マインドマップで整理する
起承転結の考え方
プロットが思いつかないわけではないのに、形にならない理由
小説のプロットが思いつかないわけではないのに、なぜか形にならない。
キャラクターも設定も浮かんでいるのに、話がまとまらずに手が止まる。
そんな経験はありませんか?
特に、ある程度書き慣れてくると、
アイデアや設定が増えすぎて、
頭の中だけでは整理しきれなくなることがあります。
それは才能や発想力の問題ではないと、私は考えています。
「プロットの考え方」ではなく、「考えた内容をどう整理しているか」
という点です。
この記事では、文章でプロットを書く前段階として、
私が実際に行っていた
マインドマップを使った思考の整理のしかた
を、
一つの短編を例にしながらご紹介します。
テーマの置き方、キャラクター同士の関係性の作り方、
物語をどう変化させ、どう収束させたか。
プロットの作り方に正解はありません。
ここで書くのは、あくまで 私が実際にやっていた一例 にすぎないということをご理解ください。
ただ、
「頭の中では考えているのに、形にならない」
そんな感覚を抱えている人にとって、
一つの参考にはなるかもしれません。
出会いをどう考えたか
ここからは、
私が短編を書くにあたり、冒頭部分をどう考えたかを整理します。
これは、
起承転結でいうと「起」にあたる部分です。
私は物語を書くにあたり、 「この物語で何を書きたいのか」が割とはっきりしています。 つまりはコンセプトです。
書きたいコンセプトがあり、 物語を作るイメージになります。
今回の短編では、これでした。
この時点では、
- 舞台
- ジャンル
- 結末
といった要素は、まだ考えていません。
あくまで、 思考の起点。 その一つを軸に置いただけです。

「正反対」を分解して考える
次に、このコンセプトに含まれる
「正反対」という言葉を、いくつかの方向に広げました。
ここでは文章にせず、
単語レベルで思いつくものを並べています。
たとえば、
- 性格
- 身分
- 職業
- 考え方
- 立場
- 生まれ
といった具合です。

この段階では、
どれを使うかは判断していません。
**まずは広げる。 **
これは、アイデアを広げる段階で 私が意識している点です。
短編向きかどうかで選ぶ
ある程度案を出したあとで、
「今回の条件に合いそうなもの」を選びました。
私が選んだのは、
性格 × 身分
という組み合わせです。
具体的には、
- スラム街の孤児
- 貴族令嬢
短編であることを考えると、
- 初対面でも対比が分かりやすい
- 説明に文字数を取られにくい
- 出会いの時点で関係性を見せることができる
と感じたため、この組み合わせを採用しました。

もちろん、
別の作品であれば別の選び方もあり得ます。
この段階で考えていたこと
ここで考えていたのは、
あくまで 物語の入り口 にあたる部分です。
- どんな二人が出会うのか
- なぜこの組み合わせなのか
二人がどう変わるか、
最終的にどう結ばれるのかは、
この時点ではまだ深く考えていません。
キャラクターを単体で作らなかった理由
この作品では、
キャラクターを一人ずつ掘り下げることよりも、
二人の関係性 を重視したいと思っていました。
そのため、
- 主人公はどんな性格か
- ヒロインはどんな人物か
を先に細かく決めることはしていません。
決めているのは「正反対」であるということのみです。
重視していたのは、あくまで 関係性 でした。
- この二人が会話したら、どんな空気になるか
- 同じ場所にいたとき、どんなイメージが生まれるか
それらを先に考えていました。
「正反対」をもう一段はっきりさせる
起の段階で、
「性格 × 身分」という対立は決めていましたが、
承の段階では、
それを会話や、やり取りの中で見せやすくしたいと考えました。
そこで選んだのが、
- 孤児は暗め
- 令嬢は明るめ
という性格の方向性です。
孤児という存在には、
どうしても負のイメージが付きまといます。
そのため、性格は暗めに。
反対に、貴族令嬢は
正のイメージが強い存在です。
なのでイメージ通りに明るめにしています。
イメージから大きく離れない、
つまり 定石通りの対比 を使うことで、
「正反対」というコンセプトを
よりはっきりさせたかった、という理由です。
なぜ「偶然の出会い」にしたのか
次に考えたのは、
この二人はなぜ出会うのか、という点です。
- 孤児が助けるのか
- 令嬢が見つけるのか
- 意図的な接触か
- 偶然か
いくつか考えた中で、
私が選んだのは 偶然の出会い でした。

ただし、
完全に理由のない偶然ではなく、
それぞれの事情が重なった結果の偶然
という形にしています。
そういう意味では、
必然と言ったほうが近いのかもしれません。
二人それぞれに置いた「事情」
関係性を自然に続けるために、
それぞれに簡単な事情を置きました。
- 孤児側の事情:貧困によるその日暮らしのキツさ
- 令嬢側の事情:貴族社会への息苦しさ

ここで意識していたのは、
どちらか一方が一方的に救われる関係にしないことです。
そこで考えたのが、
という ** ギブ・アンド・テイクの関係** でした。
この形にすると、
- 二人が会い続ける理由ができる
- 身分差があっても、上下関係になりにくい
と考えました。
この段階で考えていたこと
この段階で考えていたのは、
あくまで 関係性が続く理由 です。
- なぜ何度も会うのか
- なぜ会話が成立するのか
- なぜ離れずにいられるのか
この先、
- 関係がどう変わるか
- どこで壊れるか
といったことは、
まだはっきり決めていませんでした。
結果的に見ると、
この部分が起承転結でいう「承」にあたりますが、
当時の感覚としては、
関係が自然に続く形を探していた
という言い方のほうが近いと思います。
関係がどう変化していくのか
物語に必要なのは、
停滞ではなく 変化 だと私は考えています。
主人公がピンチに陥ったり、
ヒロインとの関係性が大きく変わったり。
そうした出来事があることで、
物語に緩急が生まれます。
この短編では、
「別れ」――つまり二人の関係性の断絶を
その変化として置くことにしました。
結果的に、
この部分が起承転結でいう「転」にあたります。
「どう壊すか」を考える
次に考えたのは、
関係をどう断ち切るかです。
ここでは、
- 喧嘩別れ
- 誤解
- 裏切り
- 強制的な引き離し
など、いくつかの案を思い浮かべました。
ただ、今回の短編では、
- 二人のどちらかが悪者になる
- 感情的な対立が主軸になる
という展開にはしたくありませんでした。
あくまで描きたかったのは、
身分差という現実 です。
選んだのは「突然、会えなくなる」形
最終的に選んだのは、
唐突に、令嬢が孤児の元に来られなくなる、
という形でした。
つまり、外的要因による断絶です。
この形にした理由はシンプルです。
- 事情があることは明白
- どちらも悪にはならない
- 自然に次へとつながる
こうした状況を、
短編の文字数でも作りやすいと考えたからです。

ここで初めて明かされる事情
関係が断ち切られた理由として用意したのが、
- 令嬢は聖女として選ばれ
- 王都へ行く必要があった
という事情です。
ここで意識していたのは、
承の段階では伏せていた理由を、
転で明かすという点でした。
なぜ急に来なくなったのか。
なぜ連絡も取れないのか。
その答えが、
二人のどうにもならない 身分差 と
結びつく形になります。
「転」で考えていたこと
この段階で考えていたのは、
次のような点です。
- 二人の関係が自然に断ち切られているか
- 誰かを悪者にしていないか
- 承で築いた関係が否定されていないか
喧嘩や裏切りではなく、
環境によって引き裂かれる 形にしたことで、
- 二人の関係そのものは壊れていない
- けれど、続けることもできない
という状態を作れたと思います。
結果的に、
この部分が起承転結でいう「転」になりますが、
感覚としては、
関係が変わらざるを得ない理由を置いた
という言い方のほうが近いと思います。
ここまでで、
- 続いていた関係が断ち切られ
- 身分差が明確になり
- このままでは終われない状態
が揃いました。
次は、この断絶をどう越えて、
物語をどう収束させたかを考えていきます。
どう収束させたか
ここからは、
断絶した関係をどうやって物語として
収束させたかを見ていきましょう。
この部分が、
起承転結でいう「結」にあたります。
「このまま終わらせたくない」という感覚
転の段階で、
- 二人は引き離され
- 身分差が明確になり
- 再び会うことが難しい状態
になりました。
今回書きたかったのは、
「正反対の二人が結ばれる物語」 です。
なので、
- 別れたまま終わる
という結末は、
コンセプトと乖離すると感じました。
必要なのは再会です。

再会するために必要な条件を考える
次に考えたのは、
二人が再会するには何が必要かという点です。
問題になっているのは、
感情ではなく 身分差 でした。
つまり、
- どちらかが歩み寄る
- 誰かが許す
といった形では解決しません。
そこで考えたのが、
孤児側が立場を変えるという選択です。
選んだのは「勇者になる」という道
孤児が聖女である令嬢の隣に立つためには、
社会的な立場を得る必要がある。
そう考えた結果、
- 孤児は勇者となり
- 聖女となった令嬢の隣に立つ
という形を選びました。
ここで意識していたのは、
- 偶然やご都合主義で再会させない
- 承や転で積み上げた問題を無視しない
という点です。
「勇者になる」という選択は、
身分差という問題を
物語のルールの中で越える方法 です。
勇者と聖女。 ここでも物語の定石を使っています。
説明を省いても受け入れやすい構図だからです。
もし長編ならば、
この部分に独自の設定を盛り込むのも
一つの選択肢かもしれません。
「結」で考えていたこと
この段階で考えていたのは、
次のような点です。
- 転で生まれた断絶が回収されているか
- 最初に置いたコンセプトに立ち返れているか
- 読後に納得感が残るか
二人が再会することで、
- 関係は回復し
- 立場の問題も解消され
- 物語として一区切りつく
そんな形を目指しました。
今回は短編だったので、
「勇者になる過程」は駆け足になっています。
ただ、長編であれば、
この「過程」に重きを置くのも
十分ありだと思います。
起承転結を通して見えたこと
こうして振り返ると、
- 起:出会いの条件を置き
- 承:関係が続く理由を作り
- 転:断絶によって変化を与え
- 結:その問題を越えて収束させる
という流れになっていました。
ただ、これは
最初から起承転結をなぞろうとして
作ったものではありません。
後から整理すると、
自然とその形に収まっていた
という感覚です。
ここまでが、
私がこの短編で行った
プロットの組み立て方の一例です。
正解ではありませんし、
別の作品なら別のやり方もあると思います。
ただ、
頭の中で考えていたことを
どう整理していったか
という点では、
一つの参考になるかもしれません。

実際に書き上げた短編の完成例
ここまで、
一つの短編を例にしながら、
私がプロットをどのように組み立て、
整理していったかを解説してきました。
ここで紹介してきた内容は、
架空のケースや説明用のモデルではありません。
実際にこの考え方を使って書き上げ、
現在も公開している短編小説が存在します。
以下では、その短編について、
起承転結それぞれが
どのように本文へ落とし込まれたかを、
実際の文章を一部抜粋しながら見ていきます。
起|出会いの場面(本文抜粋)
起の段階では、
「正反対の二人が出会う」という条件を、
できるだけ説明せず、描写だけで示すことを
意識しました。
舞台・身分・空気感の差を並べることで、
二人が「正反対」であることを、
冒頭で、尚且つ一目で伝えています。
承|関係が続く理由(本文抜粋)
承では、
なぜ二人が何度も会うのか、
なぜ関係が自然に続いていくのかを
作っています。
助ける/助けられるではなく、
愚痴と食事の交換という関係にすることで、
身分差があっても
上下関係にならない形を選びました。
転〜結|断絶と再会(本文抜粋)
この短編では、
一度関係が完全に断ち切られる「転」を経て、
身分差そのものを越える形で
「結」に至ります。
途中の断絶部分はここでは省略し、
再会と収束の場面のみを抜粋します。
最初に置いた
「正反対の二人が結ばれる」というコンセプトに、
物語全体がここで立ち返っています。
起承転結をマインドマップで整理すると何が楽か
ここまで、
一つの短編を例にしながら、
起・承・転・結それぞれで
私が何を考えていたかを書いてきました。
こうして振り返ると、
やっていること自体は
特別な理論でも、難しい技法でもありません。
ただ、
頭の中だけでこれをやろうとすると、
かなり散らかるというのが
正直なところです。
起承転結は「一直線」では考えにくい
プロットというと、
起→承→転→結
という一直線の流れを
思い浮かべがちです。
でも実際には、
- 起を考えている途中で承に触れたり
- 転を思いついてから起に戻ったり
- 結を考えた結果、承を作り直したり
という行き来が
頻繁に起こります。
起承転結は、
順番に積み上げるものというより、
行き来しながら整えていくもの
だと感じています。
マインドマップだと「行き来」が可視化できる
マインドマップで整理すると、
この行き来がそのまま形になります。
- 中央にコンセプトを置き
- 周囲に起・承・転・結を並べ
- それぞれに理由や条件を書き足していく
そうすると、
- どこが弱いか
- どこがまだ決まっていないか
- どこを変えると全体が動くか
が、一目で分かります。
文章だけで考えていると、
こうした「抜け」や「偏り」は
意外と見落としがちです。
修正がとにかく楽になる
もう一つ大きかったのは、
修正のしやすさです。
マインドマップなら、
- 該当する部分だけを書き換える
- それに影響する枝を見直す
だけで済みます。
考え直すこと自体の
ハードルが下がるというのは、
プロット作りでは
かなり大きなメリットでした。
まとめ|プロットが形にならないときにやっていたこと
この記事では、
一つの短編を例にしながら、
私がプロットをどう整理していったかを
書いてきました。
やっていたことを振り返ると、
特別な理論や技巧が
あったわけではありません。
- 書きたいものを一言で置く
- 関係性を軸に考える
- 停滞ではなく変化を入れる
- 最初のコンセプトに戻って収束させる
それを、
起・承・転・結として
後から整理していただけです。
大事だったのは「書けるかどうか」ではなく「見えるかどうか」
プロットが書けないとき、
「文章力が足りない」「才能がない」と
感じてしまうことがあります。
でも実際には、
- どこが決まっていて
- どこが決まっていなくて
- どこを考え直せばいいのか
それが
自分で見えていないだけ
という場合も多いと感じています。
正解は一つではない
この記事で紹介した方法は、
あくまで 私がやっていた一例 です。
大切なのは、
自分にとって
考え続けられる形を
見つけることだと思っています。
プロットが形にならない原因は才能ではなく、
思考の整理場所が合っていないだけの場合がある。
この記事が、
その形を見つける
きっかけの一つになれば幸いです。