小説の設定管理とは
何をすることなのか
小説を書く前に「管理」という視点を持つ
小説を書くとき、多くの人はまず「何を書くか」を考えます。
プロット、キャラクター、世界観、設定資料。
しかし、実際に書き始めてみると、別の問題に直面します。
情報が増えすぎて把握できない。
以前に決めた内容を忘れる。
修正のたびに全体が崩れる。
この問題は、発想力や文章力の問題ではありません。
そう私は考えています。 小説は、書き進めるほどに情報が増え、変化していきます。 そのため、本質的には「制作物」であると同時に「運用中の情報体系」であると言えるでしょう。
ここで重要になるのが、管理という視点です。
- プロットは、物語全体の流れを管理するもの
- 設定は、世界観や人物情報を管理するもの
どちらも「一度作って終わり」ではなく、
書きながら更新を続ける対象です。
⚠ 情報を増やすことと、管理することは別物である
このページでは「設定管理」に焦点を当てますが、
考え方の土台は「プロット管理」と共通しています。
- ・ 情報が増えたときに把握できるか
- ・ 修正が発生したときに影響範囲が見えるか
- ・ 過去の決定をすぐ確認できるか
これらに明確な答えを持てない場合、
問題は才能や経験ではなく、管理の仕組みにあると私は考えています。
この前提を共有した上で、次に「設定管理」の具体的な話に進みます。
小説の設定管理とは何か?
「設定管理」と聞くと、
設定資料をきれいにまとめることを想像する人も多いかもしれません。
しかし、私がここで指している設定管理は、
単なる整理や保存とは少し異なります。
小説における設定管理とは、
物語の中で使われる情報を、あとから確認し、必要に応じて更新できる状態に保つこと
だと私は考えています。
設定は、最初にすべて決め切れるものではありません。
書き進める中で新しい情報が生まれ、
既存の設定が修正されていくものです。
この前提に立つと、
設定を見る視点が変わります。
- 今この設定は、どこで使われているのか
- 他の設定と、どんな関係にあるのか
- 変更した場合、どこに影響が出るのか
設定管理とは、
こうした問いにすぐ答えられる状態を維持することです。
⚠ 設定を「完成させよう」とすると、書く手が止まりやすくなる
私が小説を書き始めた頃はそうでした。 設定は完璧なものであるべきと考えた結果、手が止まり、物語が前に進まなくなる。 そんな経験があります。
設定管理とは、設定を固定することではなく、変更可能な情報として扱い続けるための考え方である
なぜ小説の設定は破綻するのか?
設定が破綻するのは、
設定が足りないからではありません。
多くの場合、増え続ける情報を扱い切れなくなることが原因だと私は考えています。
書き始めた頃は問題がなくても、
登場人物や出来事が増えるにつれ、
次第に小さなズレが積み重なっていきます。
設定が頭の中にしか存在しない
初期段階では、
設定を覚えていられる感覚があります。
しかし物語が進むにつれて、
- 以前に決めた細かな条件
- 何話で出した設定か
- どこまでが確定情報か
こうした情報が曖昧になっていきます。
⚠ 「覚えているつもり」が、もっとも危険な状態になりやすい
塵も積もれば山となる。
その言葉通り、次第にズレは大きくなります。 そうなれば待っているのは物語の破綻です。

情報が分散し、確認コストが増える
設定をメモやファイルで管理していても、
場所が分かれていると確認するだけで負担になります。
- キャラ設定はノート
- 世界観は別ファイル
- 時系列は頭の中
この状態では、
確認する前に書いてしまうことが増え、
ズレが発生しやすくなります。
- ・ 設定を確認するのに何分かかるか
- ・ 書く前に毎回確認しているか
- ・ どの情報が最新か即答できるか
設定同士の関係が見えなくなる
設定は、単体では成立しません。
- キャラクターは、出来事と結びつく
- 出来事は、時系列の中に位置づく
- 世界観のルールは、行動を制限する
これらの関係が見えなくなると、
設定は「情報の塊」になってしまいます。
設定が破綻する主な原因は、情報量ではなく、関係性を把握できなくなることにある
小説の設定管理で最低限必要な3つの視点
設定管理と聞くと、
複雑な仕組みや大量の資料が必要だと感じるかもしれません。
しかし、私の経験では、
最低限押さえるべき視点はそれほど多くありません。
重要なのは、
設定をどの単位で捉え、どう扱うかです。
ここでは、
小説の設定を管理するうえで最低限必要だと感じている
三つの視点を紹介します。
人物設定をどう管理するか
人物設定は、
もっとも情報が増えやすく、ズレが起きやすい領域です。
名前や性格だけでなく、
- 年齢や立場
- 他キャラクターとの関係
- 呼び方や距離感
- 途中で変化した設定
こうした情報が積み重なっていきます。 長編を書く場合はそれがより顕著に出ます。
⚠ 人物設定は「覚えていられる範囲」をすぐに超えていく
人物設定を管理する際に重要なのは、
単体の情報ではなく、関係性を含めて把握できるかどうかです。
世界観・用語設定をどう扱うか
世界観や用語の設定は、
一度決めたら変わらないように見えます。
しかし実際には、
- 物語の都合で例外が生まれる
- 書き進める中でルールが補足される
- 初期設定が曖昧なまま確定していく
といった変化が起こります。
- ・ このルールは絶対条件か
- ・ 例外が存在する可能性はあるか
- ・ どの場面で使われた設定か
こうした問いを持ちながら管理することで、
後からの修正や調整がしやすくなります。
出来事と時系列をどう整理するか
設定の破綻で、
特に問題になりやすいのが時系列です。
- いつ起きた出来事なのか
- 同時期に何が起きていたのか
- キャラクターの行動が重なっていないか
これらが曖昧になると、
物語全体に影響が及びます。

時系列を管理する目的は、
正確な年表を作ることではありません。
物語上の因果関係を見失わないこと
それが本質だと私は考えています。
設定管理では、人物・世界観・出来事を切り分けつつ、関係性を保つ視点が重要になる
小説の設定管理を楽にする考え方
「あれ?この設定あってたっけ?」
そう感じたとき、原因を探すのに時間がかかる。
この状態そのものが、
設定管理がうまく機能していないサインだと私は考えています。
設定管理とは、 設定を完全に覚えていることではありません
必要なのは、
「確認したいときに、すぐ確認できること」です。
設定管理は「記憶の代替」である
書き手が違和感を覚えたとき、
行う行動はほぼ決まっています。
- 以前の描写を読み返す
- 設定を確認しようとする
- 前提になっている情報を探す
ここで時間がかかるのは、
記憶力が足りないからではありません。
⚠ 設定管理を「覚える努力」に任せると、必ず限界が来る
設定管理は、
記憶を補うための仕組みです。
そもそも記憶には時間経過に伴う忘却が付きまといます。
長編を書くのならば、 全てを完全に記憶しておくことは不可能です。
なので覚えておくのではなく、
参照できる形で残しておく。
この考え方が大切だと私は思っています。 そうするだけで執筆の負担が大きく変わる。 これは私の実体験です。
「すぐ辿り着ける」状態を作る
設定管理が機能している状態では、
- どこを見ればいいか分かっている
- 他の設定との関係が見える
といった状態が保たれています。
- ・ この違和感は、人物・世界観・出来事のどれに関係するか
- ・ 参照すべき情報の置き場所は決まっているか
これらが整理されていると、
違和感を覚えても、
「探す」時間は最小限で済みます。
設定管理を実際にどう形にするか
ここまでで、
設定管理とは何か、
なぜ破綻しやすいのか、
そして「原因を探すのに時間がかかる状態」が問題であることを整理してきました。
では、
この考え方を 実際の執筆の中でどう形にすればいいのか。
私が一つの答えとして辿り着いたのが、
設定を「一覧」ではなく「関係性」として扱う方法です。
「探す」行為を前提にした管理
違和感を覚えたとき、
書き手が本当にやりたいのは次の一点です。
- 今の違和感は、どの設定に由来するのか
そのためには、
- 人物から辿れる
- 出来事から辿れる
- 世界観のルールから辿れる
といった 複数の入口 が必要になります。
一方向のメモや一覧では、
どうしても「どこを見ればいいか」を考える時間が発生します。
⚠ 設定が一列に並んでいるだけでは、原因特定は早くならない
設定同士を「つなげたまま」扱う
設定は単体では意味を持ちません。
- この人物は、どの出来事に関わっているのか
- この出来事は、どの時系列に位置づくのか
- この世界観ルールは、誰の行動に影響するのか
こうした関係を、
頭の中ではなく 外に出した状態で保持する。
それが、
原因特定に時間をかけないための前提になります。
- ・ この違和感は、どの要素から辿るのが近いか
- ・ 設定同士のつながりが見えているか
- ・ 更新した設定が、他に影響していないか
NovelMapという一つの形
この考え方を形にしたものが、
NovelMapです。
NovelMapは、
設定を「書類」ではなく、
関係性を持った情報として扱うことを前提に設計されています。
- 人物・出来事・世界観を分けて整理できる
- それぞれを関係づけたまま管理できる
- 書きながら追加・修正しても、辿り直せる

重要なのは、
NovelMapである必要はない、という点です。
自分に合ったツールを自分に合った方法で
設定管理で大切なのは、ツールそのものではなく、「原因にすぐ辿り着ける構造」を作ることである
NovelMapは、
その構造を一つの形として提供しているに過ぎません。
まとめ|設定管理ができると、執筆はどう変わるのか
設定管理について、
ここまでさまざまな角度から見てきました。
ただ、伝えたいことは決して難しい話ではありません。
「あれ?この設定あってたっけ?」
そう感じたときに、
原因を探すのに時間がかからない状態を作ること。
それが、
ここで言ってきた設定管理の本質です。
設定管理ができていると、
- 違和感に気づいたあと、すぐ確認できる
- 修正すべき場所を特定できる
- 不安を抱えたまま書き進めなくて済む
といった変化が起こります。
逆に、
設定管理がうまくいっていないと、
- 過去を読み返す時間が増える
- 修正の影響範囲が見えない
- 書くことそのものが重くなる
という状態に陥りやすくなります。
設定管理とは、設定を増やすことではなく、確認と修正を迷わず行える状態を保つことである
設定は、
物語を縛るためのものではありません。
物語を最後まで書き切るために、
安心して扱える状態にしておく。
そのための考え方が、
設定管理だと私は考えています。